「この世界の片隅に」がすっごく良かったのでひたすら褒め称えたい
今週は色々ありましたが全く筆が追いついていないので
とりあえず映画感想を書いておきます。
住んでいる所でも年末から公開が始まり、やっと先日観てきました。
前評判が良いものはついナナメに観がちな私ですが、これは観れて良かった。
大きな映画館だと感染症を危惧して避けがちですが、ミニシアターなので人も少なめで良かったです(^^)
物語は1930年代から始まり、
教科書で何度も目にしたあの〝戦争の時代〟を生きた「すず」さんの、
ある平凡なひとりの女性の生活が描かれています。
戦争モノかぁ…最初はそう思っていました。
戦争を後世に伝えたい!って人とお仕事することが多かったのですが、
みんな「戦争はひどかった、こんなツライことがあった、大変だった。みんな死んだ。絶対繰り返しちゃいけない…」って…
全くもってその通りだし繰り返しちゃいけないけど…なんだかなあ〜って思ってました。大変だったと言われる度に「そうですか、大変でしたね」としか言えない自分もいて。。
教科書で学んできた世代だから、日本の戦時中の話と言われても、どこか別の世界の話というか…。
教科書って邪馬台国も本能寺の変も、同じ一冊の本に載ってるじゃないですか。だからどこかリアリティがわかなくて。
でもこの映画は、私と同じひとりの女性のお話でした。
戦争が大きくなっていって、
変わっていく日々の中で泣いたり笑ったり、
みんなで懸命に生きるお話でした。
いわゆる戦争モノを見聞きした後にある「暗さ・重たさ」ではなく、「ああ、ご飯っておいしいな」「この日常ってシアワセだな」と噛み締めさせてくれる余韻を残してくれました。
観る力を要求する作品
全編リアルな広島弁で、お国言葉や当時の言葉がフツーに出てきます。
「?」って思ってると取り残されたりします。
その他も「全部説明しない」スタンスが至る所にあります。観終わった後に、あれはどういうことだろう、と人と話したくなります。ああそうだったのか〜!と。
アニメ的な抽象表現も入ってきます。直接描かれるよりずっと印象に残る。とくにあのシーンの…
近年の商業映画はエンターテイメント性が強くて、観る側は何も考えずに観ることに慣れていますが、これは話し合いが生まれる映画作品!でした。
まじでのんさんの声がイイ!
いろんなところで絶賛されていますが、主役のすずの のんさんの声がいい。
おっとりと紡がれる広島弁に、すずという人物の奥行きがものすごく広がっています。
ツライ状況が続くと、人間の感覚って段々マヒしていくことがありますよね。
そんな中でもすずは自分の感覚を大切に生きています。
舞台が舞台なので重さもありますが、のんさんの声だからこそ重さだけが残らない。
おもしろいの?泣けるの?と聞かれたら
どこのシーンが泣けるとかってわけじゃない。
ストーリーは平凡な女性が主人公ですから、平凡と言ってしまえば平凡です。
んで戦時中の出来事を描いてもいるので、残酷といえば残酷ですが、上で書いたような押し付けがましいまでの「大変だったんだよォ〜〜〜!」ではなく
「こんなことがあった」と淡々と描かれています。
でも登場人物の人間くさくて美しい生き方が丁寧に描かれていて、
映画の作り手の、愛情と職人魂を端々に感じる作品です。
2時間あっという間でした。
感動した、なんて月並みの言葉では全く当てはまらない感情が
ぶわっと溢れて、
気がつけば涙を流していました。
音楽も秀逸。
悲しくてやりきれないなんて言ってるのに、
こんな軽やかなバンドで、優しくて美しい声なんですよ…
原曲は昔の楽曲のようです。こちらも美しい。
悲しくてやりきれない ザ・フォーク・クルセダーズ (1968)
私が生まれる20年前という古い歌ですが、知れて良かったです。いい曲だなあ。
悲しくてやりきれないから、この感情を美しいものにしてアウトプットする。
芸術表現の根本であり極みだなあ。いい曲だなあ(二回目)
鑑賞中、お腹の中の人もボッコボコ動いてました。
お母ちゃんが嗚咽をこらえていたからでしょうか…君がお腹にいるときに観れてとてもシアワセだよ…
大きくなったら一緒にまた観ようね。
こうの史代さんといえば…
昔読みました。貸してくれたのは高校の恩師。いい高校生活だった…
原作も読んでみました!
以下ネタバレ含みます〜〜
映画だと、リンさんエピソード丸っとカットですね。
その他セクシャルなことに関することに、結構手が加えられていました。
映画から入った身としては、映画の完成度を高めるためにあれで良かったと思います。
2時間だし。あれ以上要素を増やしたら、多いな散漫だなと思っただろう。
それに性的な出来事って、インパクト強いじゃん。
〝すずが、水原にあてがわれた〟ということだけで、私ひどく動揺していましたから。
あの時代海兵さんに対してはそういう風潮だったのか、とか…。死に遅れている兵隊に対する哀れみにも似た色々を感じて、それはそれはハラハラしました。
漫画の方が〝淡々と続く日々〟というテーマが強くて
戦時下の生活もかなり反映されているし、読み応えあります。個人的には戦時下無月経の話がズンときます。あの時代、子を望めない気持ち……考えただけでも………。
そしてリンさんエピソードが絡んでくると、人物の魅力が更に引き立ちます。
おもしろい…!
原作ファンが映画を観るとその点で物足りなさを感じそうだけど
映画→原作だとすんなり入れました。
ぜひ映画を見て、原作を手にとってみて下さい(^^)
長々、個人の主観をお読み頂きありがとうございます。
世の中にはいい作品があるもんですなあ〜〜〜ホホっ(嬉)